
マイクロニードルについて最初にいただく質問は、ほぼこの一点に集約されます。皮膚に微細な傷をつけることが、なぜ髪の状態に関係するのか。
育毛のために何かを始めようとすると、まず外用薬や内服薬、次にサプリメント、そして生活習慣という順で情報が出てきます。そこへ突然、針で頭皮を刺すという方法が並ぶと、発想が飛んでいるように見えます。抜け毛が気になり始めた方が、目黒の当院にお越しになったときも、最初はここで足が止まります。
刺激を与えると回復する。この考え方自体は、身体の他の場所では珍しくありません。筋力トレーニングは、筋線維に微細な損傷を与え、その修復過程で筋が太くなります。骨も、適度な負荷がかかる部位ほど密度が保たれます。皮膚と毛包に対しても、同じ発想が成り立つのかどうか。ここが出発点になります。

マイクロニードルの土台にあるのは、身体に備わっている創傷治癒の反応です。
皮膚に微細な傷ができると、身体はそれを修復するための一連の反応を始めます。まず血小板が集まり、成長因子と呼ばれる物質が放出されます。続いて炎症の段階を経て、新しい組織をつくる段階に移り、コラーゲンが産生され、微小な血管が新しくつくられていきます。
ここで重要なのは、傷の大きさです。マイクロニードルで加えるのは、肉眼で確認できない程度の微細な刺激です。組織を大きく壊すのではなく、修復の反応だけを引き出す。この加減が、マイクロストレスと呼ばれる考え方の中心にあります。強すぎれば単なる損傷になり、弱すぎれば反応が起こりません。
毛髪との関係では、いくつかの経路が想定されています。頭皮の血流が増えることで、毛包へ届く酸素と栄養の条件が変わること。修復の過程で放出される成長因子が、毛包の周囲の環境に影響すること。毛包の形成や成長期への移行に関わるとされるシグナル経路が、刺激によって動くこと。これらは実験室での観察や動物での研究を含む段階のものが多く、ヒトの頭皮で同じことが起きていると断定できる水準ではありません。
もう一つ、より確実な作用があります。皮膚の表面には角層という強固な層があり、外から塗った成分の大半はここで止まります。微細な孔ができると、この障壁が一時的に通過しやすくなります。同じ成分を塗っても、届く量が変わる。マイクロニードルが単独よりも他の方法と組み合わせて用いられることが多いのは、この性質によるところが大きいと考えられます。

現時点で比較的しっかりした報告があるのは、マイクロニードルを単独で行った場合ではなく、外用薬と併用した場合です。
男性型脱毛症の方を対象に、外用薬のみを使う群と、外用薬にマイクロニードルを組み合わせる群を無作為に分けて比較した試験があります。数か月の期間で、併用した群のほうが毛髪数の増加が大きく、患者自身の評価でも差が出たと報告されています。その後も同様の方向性を示す報告が続いていますが、参加人数が限られていたり、施術の間隔や針の長さが研究ごとに違っていたりするため、条件を揃えた比較にはなっていません。
ここから言えることは限られています。微細な刺激を加える方法には、毛髪の状態が変化する可能性を示唆する報告がある。ただし、誰に対しても同じ結果が出るとは言えず、単独で行った場合の効果を裏づける根拠は、併用の場合ほど揃っていません。
期間についても、期待の持ち方を整理しておく必要があります。毛髪には成長期、退行期、休止期という周期があり、休止期にある毛が新しく生え変わるまでには数か月単位の時間がかかります。数回で見た目が変わるという性質のものではありません。当院でも、髪質の変化を感じられる方が多いのは3回前後から、ボリュームの変化は6回前後、発毛を目的とする場合は12回程度を目安としてお伝えしています。これは改善を保証する回数ではなく、変化を判断するために必要な期間の目安です。
そして、薄毛の背景がホルモンや自己免疫にある場合、頭皮への刺激だけで完結する話にはなりません。この領域は医療の対象であり、経過によっては皮膚科での相談をお勧めしています。一方で、頭皮の炎症、血流、自律神経の状態、栄養といった要因については、施術で働きかけられる余地があります。

当院では、マイクロニードルを単独では行いません。
用いるのは9本の針を備えた2mmのスタンプ型の器具で、頭皮の状態を確認しながら、部位ごとに深さと回数を調整します。そのうえで幹細胞培養上清液を頭皮に用い、超微細な高圧噴射で導入します。針で開いた微細な経路と、圧による導入を組み合わせることで、表面に留まる量を減らすことが目的です。幹細胞培養上清液は、幹細胞が産生する成長因子を集めた液で、医療機関に卸されているものと製造元も中身も同一の製品を使用しています。
あわせて、頭皮鍼と首肩への鍼、あん摩を組み合わせます。頭皮だけを対象にしても、首肩の緊張が強く、睡眠が浅い状態が続いていれば、頭部への血流の条件は変わりにくいためです。首や肩のこり、寝つきの悪さが続いている場合は、そちらも含めて確認します。
受けていただくうえで、いくつか知っておいていただきたいことがあります。
・施術後に頭皮の赤みが出ることがあり、通常は数時間から翌日程度で落ち着きます
・当日の洗髪や整髪料の使用については、施術後にお伝えする範囲を守っていただきます
・施術の間隔は最低10日、2週間おきを基本とします。頻繁に行えば早く変わるものではありません
・頭皮に強い炎症、湿疹、かさぶた、膿がある場合は、施術を行わず皮膚科での確認を優先します
急に円形の脱毛が現れた、短期間で広い範囲の抜け毛が進んだ、頭皮に強い痛みや発疹があるという場合も、まず皮膚科での確認をお勧めします。原因によって取るべき対応が変わるためです。
抜け毛や薄毛は、原因が一つに絞れないことがほとんどです。何から手をつけるべきか判断がつかないまま時間だけが過ぎている場合は、現在の頭皮と毛髪の状態を確認するところから始めるのが確実です。
鍼灸整体院 Re-Aneは目黒駅から徒歩4分、完全予約制です。育毛施術については、火曜と水曜に専門スタッフが対応しています。
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