
トレーニングを続けている方から、肩の痛みについてご相談をいただくことがあります。ベンチプレスでバーを下ろす途中、肩の前側に鋭い痛みが走る。サイドレイズで腕が水平に近づいたあたりだけ痛む。ラットプルダウンやディップスのあと、肩の奥に重さが残る。
特徴的なのは、腕を上げる途中の一定の範囲だけが痛むという点です。上げ始めは問題なく、ある角度を越えると痛み、さらに上げると楽になる。この現象はpainful arc(有痛弧)と呼ばれ、おおよそ60度から120度の範囲で見られます。
多くの方は、まず休みます。1週間ほど押す種目を外すと痛みは引き、これで治ったと考えて元の重量に戻す。すると数回のセッションで同じ痛みが戻ってくる。この繰り返しでご相談に来られる方が、品川区・目黒周辺のジムに通う方を中心に少なくありません。
痛みが引いたことと、痛みが出た条件が変わったことは、別の話です。

肩の関節は、上腕骨の丸い骨頭が、肩甲骨の浅いくぼみに乗るような構造をしています。安定性を骨の形に頼っていないぶん、可動域が広い代わりに、筋のバランスで位置が保たれています。
この骨頭を関節の中心に引き寄せているのが、回旋筋腱板(棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋)です。腕を上げるとき、三角筋は骨頭を上へ引き上げる方向に働きます。腱板がそれに拮抗して骨頭を下方へ引きつけることで、骨頭は中心を保ったまま回転します。
骨頭の上には、肩甲骨の突起である肩峰と、そこに張る靭帯が屋根のように位置しています。その隙間を、棘上筋の腱と肩峰下滑液包が通っています。腱板の働きが追いつかず骨頭が上方へずれると、この隙間が狭くなり、腱や滑液包が繰り返し圧迫を受けます。これが、肩峰下インピンジメントと呼ばれる状態です。近年は肩峰下痛症候群、腱板に関連した肩の痛みという捉え方もされています。
トレーニングで起こりやすいのには理由があります。ベンチプレス、ショルダープレス、ディップスといった種目では、三角筋、大胸筋、広背筋といった大きな筋が優先的に発達します。一方で腱板は、重量を扱う筋ではなく、位置を保つために働く筋です。挙上動作の量に対して腱板の耐久性が追いつかなくなると、骨頭の位置が保ちにくくなると考えられます。
もう一つ、肩甲骨の動きが関わります。腕を上げるとき、肩甲骨は上方へ回旋し、後ろへ傾きながら動きます。この動きによって肩峰の位置が変わり、隙間が確保されます。前鋸筋や僧帽筋下部の働きが弱かったり、胸椎が丸まって肩甲骨が前傾したままだと、腕だけが上がって肩甲骨が付いてこない状態になります。
原因を一つに絞ることはできません。押す種目の頻度と量、可動域の取り方、肩甲骨と胸郭の動き、休息の間隔。これらが重なったときに、痛みは出やすくなります。

痛みが出たときに一度負荷を下げる判断は妥当です。ただ、休養だけで終えると、再開した時点で以前と同じ条件が戻ります。腱板の耐久性も、肩甲骨の動きも、休んでいる間に向上するわけではありません。
インナーマッスルのトレーニングを取り入れる方も多いのですが、チューブでの外旋運動だけを続けても変化が出にくいことがあります。腱板が働く場面は、腕を上げながら負荷を支えているときです。低負荷の外旋運動と、実際のプレス動作の間には距離があります。
フォームの問題も見落とされます。ベンチプレスでグリップが広く肘が真横に開いている、サイドレイズで小指側を上に向けて挙げている、ラットプルダウンやショルダープレスをバーが首の後ろを通る軌道で行っている。いずれも肩の隙間が狭くなりやすい肢位です。重量や回数を変えなくても、動作の方向を変えるだけで痛みの出方が変わることがあります。
Re-Aneでは、肩の痛みのご相談に対して、肩関節だけを確認することはしません。腕を上げるときに肩甲骨がどのタイミングで動き出すか、胸椎がどれだけ伸展するか、呼吸のときに胸郭がどう動いているか、頭部が体幹に対してどの位置にあるか。こうした点を確認したうえで、腱板や肩甲骨周囲への施術と、動作の修正を組み立てます。
肩の痛みは、肩に負担が集まった結果として現れている場合があります。集まる理由が別の場所にあるなら、そこを含めて確認する必要があると考えています。

完全に休むのではなく、痛みの出ない範囲に置き換えるという考え方が現実的です。
・バーベルをダンベルに替え、手のひらを向かい合わせるニュートラルグリップにする
・可動域を、痛みが出る手前までに一時的に制限する
・サイドレイズは真横ではなく、身体の30度ほど前方の面で、親指を上に向けて挙げる
・首の後ろを通す軌道の種目と、深く沈み込むディップスは一時的に外す
・押す種目の頻度を落とし、翌日に痛みが残らない範囲から量を戻していく
あわせて、腱板と肩甲骨周囲の働きを整えておくことが予防になります。横向きに寝て行う外旋運動、壁に沿って腕を滑らせるウォールスライド、腕立て伏せの最後に肩甲骨を押し出す動作。いずれも重量を追う種目ではないため、ウォームアップの一部として組み込むと続けやすくなります。胸椎を伸展させる動きと、深い呼吸を入れておくことも役立ちます。
なお、転倒や強い負荷のあとから腕が挙がらない、力が入らない、夜間の痛みで眠れない、腕にしびれが広がる、肩の腫れや発熱がある。こうした場合は、整形外科での確認を優先してください。腱板の断裂や別の病態が関わる可能性があります。
数週間休んでも再開すると同じ痛みが出る、フォームを変えても改善しないという場合は、肩以外の要因を含めて確認する価値があります。鍼灸整体院 Re-Aneは目黒駅から徒歩4分、完全予約制です。トレーニングを続けながら肩の状態を整えたい方は、一度ご相談ください。