
食いしばりのご相談で最も多いのが、この状態です。
歯科で相談し、就寝時に使う装置を作った。歯のすり減りは止まった。それでも夕方になると顎が重く、こめかみが張る。日中は装置を使えないので、結局これ以上できることがない。そう言われて、行き場がなくなった状態で来院される方が、目黒の当院にも少なくありません。
歯科の対応が間違っていたわけではありません。ただ、症状を起こしている要因と、歯科が扱う領域がずれていると、対処が届かない部分が残ります。まず、その線引きを整理します。

歯科と口腔外科でなければできない役割があります。ここは最初に押さえておく必要があります。
歯や被せ物の破損、亀裂、知覚過敏への対応は歯科の領域です。顎関節そのものに器質的な問題があるかどうかの評価、画像による確認、腫瘍や感染といった別の病態の除外も同様です。開口障害や関節のロックが起きている場合、対応できるのはここしかありません。
就寝時に使う装置についても、役割を正確に理解しておくと期待とのずれが減ります。この装置は、歯や補綴物を力から守るためのものです。顎の筋肉が働くこと自体を止める装置ではありません。歯のすり減りが抑えられても、筋肉の疲労が同じだけ減るとは限らない理由がここにあります。
そして、就寝中の顎の活動は、本人の意思で直接止めることができません。歯科でできるのは、その活動から歯を守ることです。活動そのものを消す方法は、現時点では確立していません。

日中の食いしばりは、就寝中とは性質が異なります。気づいて力を抜くことができる分、行動として修正する余地があります。ただし、その修正を妨げている条件は、口の中にはありません。
一つめが、姿勢と動作です。画面を見る姿勢が続いて頭部が前方へ移動すると、頸部の後面には持続的な負担がかかります。下顎は頭蓋から吊り下げられるように位置し、顎を閉じる筋、顎の下側の筋、頸部の筋の釣り合いで保たれています。頭の位置が変われば、この釣り合いも変化し、歯が接触しやすい条件が整うと考えられます。
二つめが、呼吸です。胸郭が動きにくく浅い呼吸が続くと、首まわりの筋が呼吸を補助するように働きます。首が緊張している状態は、顎にとっても力の抜きにくい状態です。息を止めた瞬間に奥歯を噛み締めている、という経験には心当たりがあると思います。
三つめが、睡眠です。就寝中の顎の活動は、睡眠中の一時的な覚醒反応と時間的に関連して起こることが報告されています。眠りが浅い状態が続けば、朝の顎のこわばりにも影響します。
四つめが、緊張と生活環境です。心理社会的なストレスとブラキシズムの関連は複数の研究で報告されています。加えて、作業時間の長さ、画面の高さ、集中を要する場面の頻度といった環境の条件も、日中の顎の力の入り方を左右します。
これらはいずれも、歯科の診療で扱う範囲の外側にあります。扱われないのは怠慢ではなく、専門領域が違うためです。歯科医師が姿勢や呼吸を評価する時間も、制度上ほとんど確保されていません。

順序を間違えないことが重要です。次に当てはまる場合は、鍼灸院や整体ではなく、歯科または口腔外科での確認を優先してください。
・口が指2本分ほど開かない、開閉の途中で引っかかって動かなくなる
・顎の腫れ、発熱、押すと強く痛む場所がある
・転倒や打撲のあとから痛みが続いている
・歯が欠けた、詰め物や被せ物が繰り返し外れる
・夜間の痛みで眠れない、しびれを伴う
これらは器質的な問題や別の病態が関わる可能性があり、判断には画像を含む評価が必要です。
一方で、歯科で確認を受けて歯や関節に問題がないと言われた、装置を使っても日中の重さが変わらない、首肩のこりや頭痛を一緒に抱えている、緊張する場面で症状が強くなる。こうした状態であれば、扱うべき対象は口の中ではなく、顎が置かれている環境のほうにあります。
鍼灸整体院 Re-Aneでは、顎まわりの緊張だけを対象にすることはありません。頭部が体幹に対してどの位置にあるか、頸部がどの方向に動きにくいか、呼吸のときに胸郭がどう動いているか、安静時の舌の位置はどうか。こうした点を確認したうえで、咬筋や側頭筋への施術と、日中の気づき方の見直しを組み立てます。
顎の緊張をゆるめること自体は、その場で起こります。それが続くかどうかは、顎が置かれている条件が変わったかどうかで決まると考えています。
どちらか一方を選ぶ話ではありません。歯を守る役割は歯科が担い、力が入る条件を変える部分は別の場所で扱う。この二つは競合しません。装置を使いながら日中の対処を並行するのが、現実的な組み立てになります。
歯科で一通りの確認を終えたうえで、まだ症状が残っている。その状態が続いているなら、確認していない場所が残っている可能性があります。鍼灸整体院 Re-Aneは目黒駅から徒歩4分、完全予約制です。
顎の症状について詳しくはこちらをご覧ください。
首や肩のこりを一緒に抱えている方はこちらをご覧ください。
眠りが浅い日が続いている方はこちらをご覧ください。
緊張や疲れが抜けにくい状態が続いている方はこちらをご覧ください。
実際に通われた方の経過は、改善事例のページに掲載しています。