
歯科の検診で、歯のすり減りを指摘された。歯ぎしりしていますねと言われたものの、家族から音を指摘されたことは一度もない。自分が食いしばっているのか、歯ぎしりをしているのか、はっきりしない。
朝起きたときに顎がこわばっている。夕方になるとこめかみが張る。仕事に集中していると、気づいたときには奥歯が触れている。こうした自覚はあるものの、それが何と呼ばれる状態なのかが分からないまま過ごしている方は少なくありません。
品川区・目黒周辺で働く方からも、同じようなご相談をいただきます。名前が分からないと、何をすればいいのかも決まりません。まずは、この二つが何によって分かれているのかを整理します。

食いしばりと歯ぎしりは、どちらもブラキシズムと呼ばれる咀嚼筋の活動に含まれます。両者を分けているのは、起こる時間帯ではありません。顎と歯の動かし方です。
食いしばりは、上下の歯を強く噛み合わせる、あるいは顎を強く固定する活動です。顎の横方向への動きは少なく、力は主に上下方向へ加わります。働くのは咬筋、側頭筋、内側翼突筋といった、下顎を持ち上げて口を閉じる筋です。音が出ないことがほとんどで、周囲にも本人にも気づかれにくい特徴があります。
歯ぎしりは、歯を接触させたまま下顎を前後や左右へ動かし、歯を擦り合わせる活動です。横方向の運動は、一つの筋だけでは起こりません。たとえば下顎を右へ動かすとき、左側の外側翼突筋が下顎を前方へ誘導し、左の内側翼突筋がそれを補い、右側の側頭筋後部などが動きを制御します。左右の筋が協調して、はじめて滑走運動が成立します。
最も明確な違いは、噛み合わせた状態で下顎の滑走運動を伴うかどうかです。滑走が少なければ食いしばり、滑走を伴えば歯ぎしりになります。
ここで押さえておきたいのが、どちらも日中と睡眠中の両方で起こり得るという点です。食いしばりは昼、歯ぎしりは夜という分け方は正確ではありません。日中は持続的な歯の接触や顎の固定が多く、睡眠中は噛み締めと律動的な顎運動が一晩の中で混ざる傾向があります。同じ方に両方が併存することも珍しくありません。
そのため、症状だけで判定することはできません。歯のすり減りは食生活や加齢、歯の状態でも起こります。顎の筋肉痛も、噛み締め以外の要因で生じます。歯ぎしりの有無を摩耗だけで断定したり、筋の痛みだけで食いしばりと決めたりすることは適切ではありません。

ブラキシズムには、全員に共通する単一の原因がありません。健康な方においては、疾患というより咀嚼筋の行動として捉えられており、程度と頻度によって身体への負担になり得るという位置づけです。
覚醒時の食いしばりや歯の接触には、集中や緊張、パソコンやスマートフォンの操作、運転、力仕事やトレーニング、顎に力を入れる習慣などが関係します。心理社会的なストレスとの関連も報告されています。
睡眠中の活動には、別の要因が関わります。睡眠中の一時的な覚醒反応と時間的に関連して起こることがあり、飲酒、喫煙、カフェイン、一部の薬剤、睡眠に関連する疾患との関連も報告されています。睡眠時無呼吸症候群と関連がみられる場合もありますが、それがすべての歯ぎしりの原因というわけではありません。
一方で、広く信じられているものの根拠が十分でない説明もあります。噛み合わせの異常だけを主要な原因とする考え方は、現在の研究では支持されていません。噛み合わせは負担のかかり方に影響する可能性がありますが、それだけで説明できるものではありません。姿勢の悪さについても同様で、姿勢不良を直接の原因と断定できる根拠はありません。頭や首の位置が顎まわりの筋活動に影響する可能性は考えられますが、原因と言い切ることはできません。
原因を一つ特定して、そこだけを取り除けば解決するという構図にはなりにくい。これが、対処が長引きやすい理由の一つです。

現実的なのは、日中と睡眠中を分けて考えることです。この二つは性質が違うため、同じ方法では対処できません。
日中の活動は、気づいて力を抜くことができます。行動として修正する余地があるのはこちらです。
・目に入る場所に「歯を離す」と書いた小さなメモを貼り、見るたびに上下の歯を離す
・力を抜こうとするより、息をゆっくり吐き切る。呼吸を止めた状態は噛み締めと同時に起こりやすいため、呼気のほうが力は抜けやすい
・画面の高さや作業時間など、顎に力が入りやすい場面の条件を調整する
・飲酒やカフェインなど、生活の要因を見直す
睡眠中の活動は、本人の意思で直接止めることが困難です。歯や詰め物、かぶせ物を守る目的では、歯科でのマウスピースが選択肢になります。ただしマウスピースは歯を保護するための装置であり、顎の活動そのものを止めるものではありません。役割を理解して使うことで、期待とのずれが生じにくくなります。
身体の側にも、整えておける条件があります。咬筋や側頭筋が持続的に緊張したままだと、力の抜きにくさは残ります。頸部が緊張していたり、胸郭が動きにくく呼吸が浅い状態も、顎まわりの筋活動に関係する場合があります。Re-Aneでは、顎の状態だけを確認するのではなく、頭部の位置、頸部の動き、呼吸のときの胸郭の動きまで含めて確認したうえで、咬筋や側頭筋への施術と、日中の気づき方の見直しを組み立てます。
なお、口が指2本分ほど開かない、開閉の途中で引っかかって動かなくなる、顎の腫れや発熱がある、転倒や打撲のあとから痛みが続く、歯が欠けた、夜間の痛みで眠れない。こうした場合は、歯科または口腔外科での確認を優先してください。いびきや日中の強い眠気を伴う場合は、睡眠に関する相談も検討する価値があります。
自分がどちらなのか分からないまま、対処だけを続けている。そうした状態が長く続いている場合は、一度整理してみることをおすすめします。鍼灸整体院 Re-Aneは目黒駅から徒歩4分、完全予約制です。顎の症状が続いている方は、ご相談ください。