押した場所ではなく、離れた場所に響く

後頭部の付け根を押したときに頭のてっぺんまで響くのは、その場所に神経の通り道が集まっているためです。

首の後ろ、髪の生え際のあたりを指で押すと、押している場所だけでなく、頭の奥や目の奥まで感覚が広がる。痛気持ちいいので、つい強く押してしまう。目黒の当院にお越しになる方でも、この習慣を持っている方は多くいらっしゃいます。

ほかの場所とは反応が違うことに、多くの方が気づいています。肩を押しても肩が痛いだけですが、ここだけは押した場所を越えて広がる。この違いには、解剖学的な理由があります。

後頭下筋群という、小さくて特殊な四つの筋

後頭部の付け根には、後頭下筋群と呼ばれる小さな筋の集まりがあります。大後頭直筋、小後頭直筋、上頭斜筋、下頭斜筋の四つで、いずれも数センチほどの短い筋です。

大きな動きをつくる筋ではありません。頭蓋骨と首の一番上の骨、その下の骨をつなぎ、頭をわずかに傾けたり回したりする細かな調整を担っています。

この筋群には際立った特徴があります。筋の中には、伸び具合を感知する筋紡錘というセンサーが備わっていますが、後頭下筋群では、その密度が非常に高いことが報告されています。背中や臀部の大きな筋と比べると、単位重量あたりの数が桁違いに多い。つまりこの筋群は、力を出すための筋というより、頭の位置を感知するためのセンサーとして働いている側面が強いということになります。

目の動きとも連動しています。視線を動かすとき、この筋群は無意識に反応します。画面を見続ける作業では、目と同時にこの筋群も働き続けることになります。

そしてもう一つ。この筋群のすぐ下には、大後頭神経が走っています。首の二番目の骨から出て、下頭斜筋の下をくぐり、後頭部へ向かって上がっていく神経です。押したときに頭頂部へ向かって響くのは、この神経の走行に沿った感覚が引き出されているためだと考えられます。

さらに、この領域の神経は脳幹のところで三叉神経と合流します。顔の感覚を伝える三叉神経と、首から上がってくる神経が、同じ場所で情報をまとめている。後頭部への刺激が、目の奥やこめかみに感じられることがあるのは、この仕組みによって説明されます。首から来る頭痛が、前頭部の痛みとして自覚される理由もここにあります。

硬膜とのつながり。分かっていることと、仮説の段階にあること

後頭下筋群と硬膜の関係については、実際に解剖学的な連結が確認されています。ただし、そこから語られる機能については、まだ仮説の段階にあるものが多くあります。この区別は押さえておく必要があります。

硬膜は、脳と脊髄を包む三層の膜のうち、最も外側にある丈夫な膜です。1990年代に、小後頭直筋と、頭蓋骨と首の骨の間にある膜を介して、この硬膜へつながる線維性の連結が報告されました。筋硬膜橋と呼ばれるものです。その後の研究で、大後頭直筋や下頭斜筋、項靭帯からも同様の連結があることが報告されています。

構造として存在することは、複数の研究で確認されています。問題はその役割です。

現在の有力な考え方として、首を動かしたときに硬膜がたわんで脊髄を圧迫しないよう、張力を調整しているのではないかというものがあります。また、この連結が脳脊髄液の流れに関与しているのではないかという仮説も提唱されています。ただし、これらはまだ検証の途上にあり、断定できる段階ではありません。

臨床的な視点で言えば、この構造が示しているのは、後頭部の付け根が単なる筋肉の集まりではないということです。頭の位置を感知するセンサー、頭部へ向かう神経の通り道、そして中枢を包む膜への連結。これだけの要素が数センチ四方に集まっている場所は、身体の中でも限られています。

だからこそ、ここを押したときの反応は、ほかの場所とは違ってきます。

自分で強く押してはいけない理由と、Re-Aneでの進め方

痛気持ちいいからといって、この場所を強く押し込むことはお勧めしません。

理由の一つは、椎骨動脈の存在です。この血管は首の骨の中を通って上がり、後頭下筋群のすぐ内側で大きく方向を変えて頭蓋内へ入ります。脳へ血液を送る重要な血管が、この領域のごく近くを走っています。強く押し込む、ひねる、勢いよく回すといった操作は避けてください。

もう一つは、神経への刺激です。大後頭神経がこの筋群の下を通っている以上、強い圧迫を繰り返せば、神経自体への負担になります。ゆるめるつもりで押していたものが、かえって過敏な状態をつくることがあります。

ご自身でできる範囲としては、押し込むのではなく、姿勢のほうを変えるほうが確実です。画面の高さを目線に近づけて、頭が前に出る時間を減らす。長時間の作業では、遠くを見る時間を挟んで、目と首の緊張をいったん切る。仰向けに寝て、後頭部の下に丸めたタオルを軽く当て、頭の重さだけで沈める。強い刺激を加えず、時間をかけて緩ませる方法です。

鍼灸整体院 Re-Aneでは、後頭部の付け根に症状がある場合でも、その部位だけを対象にすることはありません。頭部が体幹に対してどの位置にあるか、頸部がどの方向に動きにくいか、呼吸のときに胸郭がどう動いているか、目線の使い方に偏りがないか。こうした点を確認したうえで、後頭下筋群への施術と、頭部の位置や作業環境の見直しを組み立てます。

この場所が硬くなる背景には、頭を支え続けている状況があります。支える必要がある限り、ゆるめても同じ状態に戻ります。緊張をほどくことと、支えなくてよい条件をつくること。その両方が要ると考えています。

なお、突然これまでに経験したことのない強い頭痛が起きた、発熱を伴って首が硬く曲げにくい、手足のしびれや力の入りにくさがある、めまいやものが二重に見える症状を伴う、ろれつが回りにくい、転倒や事故のあとから症状が続いている。こうした場合は、施術ではなく医療機関での確認を最優先してください。緊急の対応を要する状態が含まれます。

首の付け根を押す習慣が何年も続いている。その状態が変わらないなら、押す以外の方法を試してみる価値があります。鍼灸整体院 Re-Aneは目黒駅から徒歩4分、完全予約制です。

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実際に通われた方の経過は、改善事例のページに掲載しています。

お客様の声

■ この記事を書いた人

榎園 高一郎
鍼灸整体院 Re-Ane 院長

【国家資格】
はり師/きゅう師/あん摩マッサージ指圧師

【関連資格】
JCR登録カイロプラクター/NESTA-PFT/医薬品登録販売者/毛髪診断士

鍼灸・整体の臨床に20年間携わり、歯科医師との連携による顎関節症・食いしばりへの施術、訪問マッサージ、姿勢・動作改善などを経験。現在は顎関節症、慢性腰痛、坐骨神経痛、発毛促進を目的とした育毛施術を中心に行っている。

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