顎の下が張る、飲み込みが浅い。その違和感の場所

顎関節症のご相談で見落とされやすいのが、顎の下にある舌骨上筋群です。噛む筋肉ではないため、顎の症状と結びつけて考えられることがほとんどありません。

顎そのものより、その下側が詰まっている感じがする。飲み込むときに喉のあたりが浅く動いている気がする。あくびをすると顎の下がつっぱる。上を向くと首の前が張る。目黒の当院でも、顎関節の相談の途中でこうした訴えが出てくることがよくあります。

咬筋や側頭筋への施術を受けても、この部分の違和感だけが残る。そういう経過をたどっている場合、確認していない場所として顎の下側が残っている可能性があります。

舌骨上筋群が担っている四つの仕事

舌骨上筋群は、下顎骨と舌骨の間を結ぶ筋の集まりです。顎二腹筋、顎舌骨筋、オトガイ舌骨筋、茎突舌骨筋の四つで構成されます。

この筋群には、一つ変わった特徴があります。同じ場所に集まっているにもかかわらず、支配している神経が三つに分かれています。顎舌骨筋と顎二腹筋の前腹は三叉神経、オトガイ舌骨筋は舌下神経、茎突舌骨筋と顎二腹筋の後腹は顔面神経です。発生の由来が異なる筋が、同じ働きのために隣り合って配置されている珍しい構成です。

仕事は大きく四つあります。

一つめが開口です。口を開けるとき、舌骨が下側の筋群によって固定されると、舌骨上筋群は下顎を引き下げる方向に働きます。開口は外側翼突筋の下頭だけで起こるわけではなく、この筋群が加わってはじめて成立します。

二つめが嚥下です。飲み込む瞬間、舌骨と喉頭は上前方へ持ち上げられます。この動きをつくるのが舌骨上筋群で、気道が閉じられて食物が食道へ送られる一連の流れの起点になっています。

三つめが下顎の安定です。下顎は頭蓋から吊り下げられるように位置しており、閉口筋が上から支え、舌骨上筋群が下から引く。この釣り合いによって位置が保たれます。

四つめが口腔底と舌の土台です。顎舌骨筋は口腔底を形づくり、その上に舌が乗っています。安静時に舌が上顎に触れている状態を保てるかどうかは、この土台の状態に左右されます。

機能不全で起こること。頭部前方位からの連鎖

この筋群が正しく働かなくなる最も多い背景は、頭部の位置の変化です。

画面を見る姿勢が続いて頭部が前方へ移動すると、舌骨は下方へ引かれます。舌骨上筋群は引き伸ばされたまま張力がかかり続ける状態になります。筋は伸ばされたまま緊張していると、力を出す能力が落ちます。硬いのに働けない、という状態です。

ここから連鎖が始まります。

下から引く力が弱くなると、下顎の位置を保つ役割が閉口筋の側に偏ります。咬筋や側頭筋が軽く働き続けて位置を支えることになり、上下の歯が接触しやすい条件が整います。食いしばりの相談で顎の下側を確認する理由は、ここにあります。

開口の場面でも影響が出ます。舌骨上筋群が働けないと、口を大きく開ける動作が別の筋への負担で補われます。開口量が伸びない、開けるときに下顎がまっすぐ下りずにどちらかへ逸れる、開けたあとに顎の下が疲れる。こうした変化として現れることがあります。

嚥下でも代償が起こります。舌骨を持ち上げる力が不足すると、口唇や表情筋、頸部の筋を使って飲み込む形になります。飲み込むときに口元に力が入る、顎を引くようにして飲み込む、喉のあたりが浅く動いている感じがする。一日に何百回と繰り返される動作なので、代償が定着すると負担が積み重なります。

そして舌の位置です。口腔底の張りが変われば、安静時の舌の位置も保ちにくくなります。舌が下がった位置に落ちると、下顎の安定にはさらに不利な条件になります。

これらは必ずこの順序で起こるわけではありません。ただ、顎の症状が残っている場合に、この経路が確認されないまま終わっていることは少なくないと考えています。

自分で確認する方法と、Re-Aneでの進め方

いくつか、ご自身で確認できる点があります。

安静にしているとき、舌先が上顎に軽く触れているかどうか。触れておらず、下の歯の裏側に当たっているなら、土台の状態を確認する意味があります。

口を開けるとき、下顎がまっすぐ下りているかどうか。鏡の前でゆっくり開けて、どちらかへ逸れていかないかを見てください。

飲み込むときに、口元や首の前に力が入っていないかどうか。唾液を飲み込んでみて、顎の下に軽く指を当てると、持ち上がる動きが確認できます。

顎の下側、下顎の骨の内側に沿った部分を軽く押さえて、圧痛や硬さが左右で違わないかどうか。強く押し込まず、触れる程度で構いません。

鍼灸整体院 Re-Aneでは、顎関節症のご相談に対して咬筋や側頭筋だけを対象にすることはありません。頭部が体幹に対してどの位置にあるか、頸部がどの方向に動きにくいか、開口時に下顎がどう動くか、安静時の舌の位置はどうか、呼吸のときに胸郭がどう動いているか。こうした点を確認したうえで、顎の下側を含めた施術と、頭部の位置や日中の癖の見直しを組み立てます。

顎の下の緊張をゆるめること自体は、その場で起こります。それが続くかどうかは、頭部の位置が変わったかどうかで決まると考えています。舌骨上筋群が引き伸ばされ続ける条件が残っていれば、同じ状態に戻ります。

なお、飲み込みにくさが日常的に続いている、食事中にむせることが増えた、声のかすれを伴う、首の前に腫れやしこりがある。こうした場合は、顎の問題として扱う前に耳鼻咽喉科などの医療機関での確認を優先してください。別の要因が関わる可能性があります。口が指二本分ほど開かない、開閉の途中で引っかかって動かなくなるという場合も、歯科口腔外科での確認が先になります。

顎まわりの施術を受けても違和感が残っている。その状態が続いているなら、まだ確認していない場所があるかもしれません。鍼灸整体院 Re-Aneは目黒駅から徒歩4分、完全予約制です。

顎関節の症状について詳しくはこちらをご覧ください。

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