頭に鍼を打って、髪に何が起こるのか

頭皮への刺鍼で起きていることの中心は、局所の血流の変化と、頭部の筋緊張の低下です。

育毛のご相談で、この質問は必ず出てきます。頭に鍼を刺すことと、髪が生えることが、どうしても結びつかない。目黒の当院でも、施術の内容を説明する際にここで足が止まる方が多くいらっしゃいます。

この疑問には、二つの答え方があります。現代の解剖学と生理学から説明する方法と、東洋医学の枠組みから説明する方法です。どちらが正しいという話ではなく、別の地図で同じ場所を見ているという関係にあります。

両方を並べて説明します。そのうえで、どこまでが根拠のある話で、どこからが古典的な枠組みなのかも分けて書きます。

西洋医学から見た四つの経路

鍼を刺したときに身体で起きることは、いくつかの経路に整理できます。

一つめが、局所の血流です。鍼が組織に入ると、そこにある感覚神経の末端が刺激を受けます。このとき、神経の末端から血管を広げる働きを持つ物質が放出され、刺した周囲の血管が拡張します。軸索反射と呼ばれる仕組みで、刺鍼後に皮膚がうっすら赤くなるのはこの反応によるものです。鍼による局所血流の改善は、鍼灸の作用のなかでも比較的しっかりした根拠があります。

毛包が毛をつくるとき、必要な材料はすべて血液から届きます。供給の条件が変われば、毛をつくる現場の条件も変わります。

二つめが、微小な損傷に対する修復反応です。鍼が通った経路にはごくわずかな組織の損傷が生じ、身体はそれを修復しようとします。この過程で成長因子が放出されます。マイクロニードルで狙っているものと同じ仕組みですが、鍼は本数が限られるため、範囲としてはかなり限定的です。ここを過大に見積もるべきではありません。

三つめが、自律神経の状態です。頭皮の細い血管は自律神経の調節を受けており、緊張が続く状態では収縮する方向に傾きます。鍼施術によって緊張がほどける反応がみられることがあり、その結果として末梢の血流条件が変わる可能性が考えられます。ただし、この経路については個人差が大きく、断定できる水準にはありません。

四つめが、頭部の筋緊張です。頭皮の下には帽状腱膜という膜があり、前後の筋につながっています。側頭部には側頭筋、後頭部の付け根には後頭下筋群があります。これらが持続的に緊張していると、頭皮全体が引っ張られた状態になります。首肩への刺鍼を組み合わせるのは、頭部を養う血管が頸部を通って上がってくるためです。入口の手前で条件が決まっている場合、頭皮だけを扱っても変わりません。

ここで正直にお伝えしておきます。鍼による育毛効果を検証したヒトの研究は、規模が小さいものや条件の揃っていないものが中心で、質の高い比較試験が十分に揃っているとは言えません。血流が改善するという個別の作用には根拠がありますが、それが毛髪の変化にどこまで結びつくかについては、可能性を示唆する段階にとどまります。

東洋医学の枠組みでは、髪をどう捉えるか

東洋医学では、髪は身体の内側の状態が外に現れたものとして扱われます。

古典に「髪は血余」という言葉があります。髪は血の余りである、という意味です。身体を巡る血が十分にあり、必要な場所に行き渡ってなお余裕がある状態でなければ、髪まで回らないという考え方です。血が不足した状態を血虚と呼び、髪が細くなる、艶がなくなる、抜けやすくなるといった変化と結びつけて捉えます。

もう一つ、「腎の華は髪にあり」という考え方があります。ここでいう腎は臓器としての腎臓ではなく、成長や老化、生殖に関わる働きをまとめた概念です。加齢とともにこの働きが衰えると、白髪や脱毛として現れると考えます。

頭部の捉え方も特徴的です。頭は諸陽の会と呼ばれ、身体の陽の気が集まる場所とされます。頭頂から背面を通る督脈、後頭部から背中を下る膀胱経、側頭部を走る胆経など、複数の経絡が頭部を通過します。頭皮への刺鍼は、これらの流れに働きかけるものとして位置づけられます。

そして、同じ薄毛でも背景を分けて考えます。血が足りていないのか、腎の働きが衰えているのか、ストレスで気の巡りが滞っているのか、頭皮に余分な熱や湿がこもっているのか。円形脱毛症のように急に現れるものは、気の巡りの滞りと関連づけて捉えられることが多くあります。使うツボも、この見立てによって変わります。

この枠組みは、現代医学の用語に一対一で置き換えられるものではありません。血虚が貧血のことだと単純に訳すこともできません。数千年かけて積み上げられた別の体系であり、検証の方法も現代科学とは異なります。科学的に証明されたものとして語るべきではない一方、臨床で使われ続けてきた実用的な地図でもあります。

二つの視点をどう使うか。Re-Aneでの実際

当院では、この二つを役割で分けて使っています。

西洋医学の枠組みは、何が起きているかを説明し、施術の範囲と限界を決めるために使います。血流が変わる。筋緊張が下がる。ここまでは説明できる。一方で、ホルモンが背景にある男性型脱毛症や、自己免疫が関わる円形脱毛症に対して、鍼が直接働きかけることはできません。この線引きは西洋医学の理解がなければ引けません。

東洋医学の枠組みは、同じ薄毛の方でも、どこから手をつけるかを決めるために使います。全身の状態、睡眠、消化の具合、冷えの有無、疲労の質。こうした情報から、その方の背景を組み立てていきます。頭皮だけを見ていては出てこない判断です。

実際の施術では、頭皮への刺鍼に加えて、首肩への鍼とあん摩を組み合わせます。頭部を養う血管は頸部を通るため、そこの緊張が強ければ頭皮への条件は整いません。さらに、マイクロニードルと幹細胞培養上清液の導入を行います。鍼で扱えるのは条件の部分で、材料を届ける工程は別に必要だと考えているためです。

なお、急に円形の脱毛が現れた、短期間で広い範囲の抜け毛が進んだ、頭皮に強い痛みや発疹がある、全体的に薄くなり体調の変化も伴っている。こうした場合は、皮膚科や内科での確認を優先してください。背景によって取るべき対応が変わります。

鍼で何が起きているのかを知らないまま受け続けるより、説明を聞いたうえで判断していただくほうが納得は深くなります。鍼灸整体院 Re-Aneは目黒駅から徒歩4分、完全予約制です。育毛施術については、火曜と水曜に専門スタッフが対応しています。

発毛促進を目的とした育毛施術について、詳しくはこちらをご覧ください。

育毛鍼(薄毛・髪質改善)

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お客様の声

■ この記事を書いた人

榎園 高一郎
鍼灸整体院 Re-Ane 院長

【国家資格】
はり師/きゅう師/あん摩マッサージ指圧師

【関連資格】
JCR登録カイロプラクター/NESTA-PFT/医薬品登録販売者/毛髪診断士

鍼灸・整体の臨床に20年間携わり、歯科医師との連携による顎関節症・食いしばりへの施術、訪問マッサージ、姿勢・動作改善などを経験。現在は顎関節症、慢性腰痛、坐骨神経痛、発毛促進を目的とした育毛施術を中心に行っている。

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院長紹介


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