
外側翼突筋に触れられるかどうかについて、専門家の間で意見が分かれています。これは誰かが間違っているという話ではなく、研究報告そのものが割れているためです。
顎関節の不調を扱う場面で、外側翼突筋の名前は必ず出てきます。関節円板や関節包に付着する上頭は、円板の位置に直接関わる筋として知られています。下頭は下顎頭を前方へ引き、開口や前方への滑走を担います。顎関節症の話をするうえで、これほど中心にある筋はありません。
だからこそ、ここに徒手で働きかけられるかどうかは、施術の組み立てを大きく左右します。目黒の当院にも、他院で外側翼突筋にアプローチしたと言われたが本当なのか、という質問をいただくことがあります。
先に結論をお伝えします。多くの解剖学的検証では、口腔内から外側翼突筋に指を届かせることは難しいとされています。触れているように感じられるものの正体は、別の構造である可能性が高いというのが現在の主流です。

外側翼突筋は、頬骨弓の内側、下顎骨の枝の奥にある側頭下窩と呼ばれる空間に位置しています。外側は下顎骨の枝と筋突起に覆われ、口腔内から上の奥歯の後ろを通って指を進めても、その手前で別の組織に阻まれます。
献体を用いた検証では、指先が到達する位置と外側翼突筋の間に、平均して8ミリ前後の距離が残っていたと報告されています。そして、その間に挟まっているのが内側翼突筋の浅層です。多くの標本で、この浅層が外側翼突筋の下頭に隣接して存在していました。
つまり、外側翼突筋を触っているつもりで押しているのは、内側翼突筋の浅い部分か、頬筋やその周囲の組織である可能性が高いということになります。
もう一つ問題があります。この領域は、症状のない方でも押すと痛みが出やすい場所です。圧痛があったからこの筋に問題がある、という判断が成り立ちにくい。検査する人によって結果が一致しにくいことも報告されています。押して痛いという反応だけを根拠に施術方針を決めると、誤った方向へ進む余地が残ります。
一方で、口腔内からの触知が確認できたとする報告も存在します。画像や筋電図を併用して検証したもので、技術と解剖の理解があれば可能だという立場です。ただし、こちらは報告数として少数にとどまります。
現時点で妥当な整理は、こうなります。理論上まったく不可能とは言い切れないものの、臨床の標準的な手技として信頼できるほどの再現性はない。触れたかどうかを確かめる手段が施術者の感覚しかない以上、そこを施術の根拠に据えるのは危うい、ということです。

外側翼突筋と違い、内側翼突筋には触れることができます。
この筋は下顎骨の枝の内側面に付着しており、口腔外からであれば、下顎角の内側の縁に沿って指を当てることで、その一部に触れられます。口腔内からであれば、下顎の枝の内側面に沿って確認できます。咬筋が外側から下顎を支えるのに対し、内側翼突筋は内側から支える位置にあり、噛みしめの負担を受ける筋の一つです。
顎の奥が重い、耳の下から顎にかけて詰まる感じがする、口を開けるときに内側から引っかかる。こうした訴えの背景に、この筋の緊張が関わっていることがあります。外側翼突筋の話として語られてきたもののうち、いくらかはここに置き換えて考えたほうが説明がつきます。
ただし、口腔内から手を入れる操作には別の線引きがあります。口腔内への直接的な処置は歯科医師の業務範囲にあたるため、鍼灸院や整体院で行うべきものではありません。当院でも、口腔内に指を入れる手技は行っていません。この点を曖昧にしている施設があれば、確認しておいたほうがよいと考えています。
したがって、実際に扱えるのは口腔外からの範囲になります。それでも、下顎角の内側や咬筋の深部、側頭筋の停止部あたりを丁寧に確認していけば、得られる情報は十分にあります。

外側翼突筋に直接触れられないとしても、その筋が置かれている条件を変えることはできます。
まず、状態を推測する方法があります。抵抗に逆らって下顎を前へ出してもらう、あるいは開口してもらったときに症状が出るかどうか。奥歯の間に何かを挟んで噛みしめてもらったときの反応。こうした動きへの反応から、押して痛いかどうかよりも確かな手がかりが得られます。触診に頼らず、機能の側から確認していく考え方です。
そのうえで、条件のほうを扱います。外側翼突筋が持続的に緊張する背景には、下顎の位置が保ちにくい状態があります。頭部が前方へ移動すれば、下顎を支える筋の釣り合いが変わります。顎の下側にある筋群が引き伸ばされたままになれば、下から支える力が落ちます。上下の歯が触れたままになる癖があれば、関節にかかる圧が一日中高いままになります。
これらはいずれも、口腔外から扱える範囲にあります。届かない場所を無理に触ろうとするより、届く範囲で条件を変えていくほうが現実的です。
鍼灸整体院 Re-Aneでは、顎関節のご相談に対して、頭部が体幹に対してどの位置にあるか、頸部がどの方向に動きにくいか、開口時に下顎がまっすぐ動くか、安静時の舌の位置はどうか、呼吸のときに胸郭がどう動いているかを確認します。そのうえで、咬筋、側頭筋、顎の下側の筋群への施術と、頭部の位置や日中の癖の見直しを組み立てます。
外側翼突筋を直接ゆるめました、という説明はしません。できないことをできると言わないほうが、結果として説明が正確になると考えています。
なお、口が指二本分ほど開かない、開閉の途中で引っかかって動かなくなる、顎の腫れや発熱がある、転倒や打撲のあとから痛みが続いている、しびれを伴う。こうした場合は、歯科口腔外科での確認を優先してください。画像を含む評価が必要な段階です。
顎の施術を受けたが説明に納得できていない。その状態が続いているなら、何を確認して何をしているのかを整理してみる価値があります。鍼灸整体院 Re-Aneは目黒駅から徒歩4分、完全予約制です。
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実際に通われた方の経過は、改善事例のページに掲載しています。
■ この記事を書いた人
榎園 高一郎
鍼灸整体院 Re-Ane 院長
【国家資格】
はり師/きゅう師/あん摩マッサージ指圧師
【関連資格】
JCR登録カイロプラクター/NESTA-PFT/医薬品登録販売者/毛髪診断士
鍼灸・整体の臨床に20年間携わり、歯科医師との連携による顎関節症・食いしばりへの施術、訪問マッサージ、姿勢・動作改善などを経験。現在は顎関節症、慢性腰痛、坐骨神経痛、発毛促進を目的とした育毛施術を中心に行っている。
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