口を開けるたびに、耳の前で音が鳴る

顎で鳴る音の正体は、関節の中でクッションが引っかかって外れる音です。指の関節を鳴らしたときのような、気泡による音ではありません。

あくびをしたとき、大きな口を開けたとき、食事の途中で、耳の前あたりでカクッと音がする。痛みがないので放置しているものの、気になってはいる。目黒の当院にお越しになる方からも、ほかの症状の相談の途中で「そういえば顎も鳴ります」と出てくることがよくあります。

先にお伝えしておくと、痛みも開けにくさもない音だけの状態は、それほど珍しいものではありません。無症状の方にも一定の割合で見られ、それ自体がただちに治療の対象になるわけではありません。ただし、音の出方が変わってきたときや、開けにくさを伴うようになったときは、意味合いが変わります。

まず、何が鳴っているのかを整理します。

音の正体は、関節円板が乗り越える瞬間

顎関節には、下顎の骨の先端と頭蓋骨の受け皿の間に、関節円板と呼ばれる線維性のクッションが挟まっています。

口を開けるとき、下顎の骨の先端は、その場で回転しながら同時に前方へ滑っていきます。関節円板は、その動きに合わせて骨の上に乗ったまま一緒に移動します。この関係が保たれていれば、動きは滑らかで音は出ません。

音が鳴るのは、この関係がずれたときです。閉じている状態で関節円板が本来の位置より前方にずれていると、口を開けていく途中で骨の先端が円板の後ろ端にぶつかり、乗り越えて正しい位置関係に戻ります。このとき出るのがカクッという音です。そして口を閉じる途中で、また円板が前方へ外れる。閉じるときにもう一度小さな音がする方がいるのは、このためです。

開けるときと閉じるときの二度鳴るのは、円板が外れて戻ってを繰り返している状態を示しています。音の大小と状態の重さは必ずしも一致しませんが、鳴っている限り、関節の中で毎回この引っかかりが起きていることになります。

円板を引っ張る筋肉と、条件をつくる筋肉

関節円板の位置に直接関わる筋肉として知られているのが、外側翼突筋の上頭です。

この筋肉は関節円板や関節包に付着しており、円板の動きを制御する役割を担っています。持続的に緊張した状態が続くと、円板を前方へ引く力が働き続けることになります。円板が前方へずれた位置で定着しやすい条件が、ここでつくられると考えられます。

ただし、この筋肉だけを取り出しても話は完結しません。口を閉じる方向に働く咬筋、側頭筋、内側翼突筋が持続的に緊張していれば、関節にかかる圧そのものが高い状態が続きます。上下の歯が触れたままになる癖があると、この状態が一日中続くことになります。

さらに、下顎の位置は頭部と頸部の関係にも影響を受けます。下顎は頭蓋から吊り下げられるように位置し、閉口筋、顎の下側の筋、頸部の筋の釣り合いで保たれています。画面を見る姿勢が続いて頭部が前方へ移動すると、この釣り合いが変化します。左右どちらかで噛む癖、頬杖、うつ伏せ寝といった習慣も、片側に偏った負担を積み重ねます。

原因を一つに絞ることはできません。円板のずれという結果に対して、複数の条件が重なっているというのが実際のところです。

音が消えたときこそ注意。対処と受診の目安

放置したときに注意すべきなのは、音が続くことではなく、音が消えることです。

前方にずれた円板が毎回戻っている状態を、復位性のずれと呼びます。この段階では音が鳴ります。ところが、円板が戻らなくなると音は出なくなります。骨の先端が円板に前方から阻まれる形になり、口が大きく開かなくなる。指が二本入らない程度までしか開かず、無理に開こうとすると引っかかって止まる。これがクローズドロックと呼ばれる状態です。

音が消えたので治ったと考えて様子を見ているうちに、開けにくさが定着してしまうことがあります。すべての方がこの経過をたどるわけではありませんが、順序としてはこの流れがあることを知っておいてください。

ご自身でできることとしては、まず音を消そうとして顎を左右に動かしたり、意図的に鳴らしたりしないことです。関節の中の引っかかりを繰り返すだけで、円板の後ろにある組織への負担が増えます。あわせて、大きく口を開ける機会を減らす、硬いものや長く噛み続けるものを一時的に控える、片側だけで噛む癖を意識する、頬杖やうつ伏せ寝を避ける。日中に上下の歯が触れていることに気づいたら離す。この積み重ねが土台になります。

鍼灸整体院 Re-Aneでは、顎関節そのものだけを対象にすることはありません。咬筋や側頭筋の緊張の左右差、頭部が体幹に対してどの位置にあるか、頸部がどの方向に動きにくいか、開口時に下顎がまっすぐ動いているか。こうした点を確認したうえで、咀嚼筋への鍼施術と、頭部の位置や日中の癖の見直しを組み立てます。すでに前方へずれている円板を、施術によって元の位置に戻すというものではありません。円板を引く力と、関節にかかる圧の条件を変えていくことが目的です。

口が指二本分ほど開かない、開閉の途中で引っかかって動かなくなる、顎の腫れや発熱がある、転倒や打撲のあとから痛みが続いている、しびれを伴う。こうした場合は、歯科口腔外科での確認を優先してください。画像を含む評価が必要な段階です。

音だけの状態が長く続いていて、最近になって開けにくさや痛みが出てきた。その変化があるなら、条件を確認しておく意味があります。鍼灸整体院 Re-Aneは目黒駅から徒歩4分、完全予約制です。

顎関節の症状について詳しくはこちらをご覧ください。

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